サイボーグ009 試し読み
『サイボーグ009』を読むかどうか迷っている人へ
石ノ森章太郎が1964年に『週刊少年キング』で描き始めたSF漫画。世界各国から拉致され改造された9人が、自分たちを作り出した死の商人「ブラックゴースト」のもとから逃れ、その野望を阻むために戦う。掲載誌は『週刊少年マガジン』『冒険王』『COM』『週刊少年サンデー』など複数にまたがり、出版社をまたいで断続的に描き継がれた。冷戦下の反戦意識、人種問題、人間と機械のあいだで揺れる自意識といった重い主題を、ヒーローものの器に入れて扱っている。累計発行部数は2012年10月時点で1000万部を超えた。作者の死により、作者自身の手による完結編は完成していない。1966年から現在まで繰り返し映像化されてきた作品でもある。電子版は27巻まで。
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名前だけ知ってる作品の、いちばん面白いところ
俺はずっと、加速装置でビュンと走るヒーローの話だと思ってたんだよ。そのくらいの解像度で止まってた。それで実際に開いてみたら、ベトナム戦争が出てくるし、人種の話が出てくるし、自分がもう人間じゃないことに主人公がずっと苦しんでる。ヒーローの姿はしてるけど、中身はかなり容赦ない。
始まりが「借金を返すため」だって知ってた?
ここ、いちばん好きな話なんだけど。石ノ森章太郎はこれを描き始めたころスランプに陥っていて、三か月かけて世界を一周してるんだよ。その旅費として出版社から200万円を借りていた。つまりこれ、借りた金を返すためにやむなく描き出した作品なの。
しかもそれまでのマニアックな作風をやめて、初めて一般の読者に向けて娯楽に徹しようとしたのが本作だった。石ノ森自身が、これを漫画家としての第一作だと言っている。追い込まれて、腹をくくって、間口を広げた。その一本が代表作になっちゃうんだから、人生って分からないよね。
9人という数字は野球から来ている
人数が9人なのは、野球のナインが発想の元だから。制作ノートの段階では、ひとりずつに守備位置を割り当てながら性格を組み立てていたそうだよ。しかも出身国が世界中にばらけているのは、作者が世界一周から帰ってきた直後に描き始めたからで、サイボーグという題材そのものも旅先で読んだ雑誌の特集に触発されている。
思いつきの出どころが軽やかなんだよね。野球と旅行。それでできあがったのが冷戦の重さを正面から抱えた作品というのが、どうにも面白い。
読んでいていちばん効いてくるところ
ヒーローものの器に、冷戦がまるごと入っている
背景にあるのは1960年代の米ソ対立で、戦争そのものを舞台にした回もある。神話や古代文明を題材にした編もあれば、人種のこと、異なる文化がぶつかること、文明が抱えている歪みを考えさせる回もある。ひとつの敵を倒して終わり、にならないんだよ。
「作った側を裏切る」という一点
石ノ森の作品にはくり返し出てくるかたちがあって、それは、自分に力を与えた者に背いて、その者の野望に唯一立ち向かえる存在として孤独に戦い続ける、というもの。本作はまさにそれ。彼らを改造したのは敵で、その敵に対抗できるのは同じ技術で作られた彼らしかいない。だから逃げても終わらないし、勝っても人間には戻れない。この構図が最初から最後まで効いている。
9人が9人とも、能力の毛色が違う
飛べる人、超能力を使う赤ん坊、全身が武器の人、水中に特化した人、炎を吐く料理人、姿を変えられる元俳優。並べると相当ばらばらで、正直かみ合ってない。でもそのちぐはぐさが、寄せ集めで逃げてきた集団という出自にちゃんと合ってるんだよね。バランスが取れていないことに意味がある。
絵柄が途中で別物になる
長く描かれた作品だから、丸くてデフォルメの効いた絵から、だんだん劇画寄りの硬い絵に変わっていく。同じ人物とは思えないくらい変わる。ふつうなら欠点として書くところだけど、これは作者が数十年かけて付き合った証拠なので、俺はむしろ見どころだと思ってる。
正直に言っておきたいこと
これは終わっていない
作者が完結編を仕上げる前に亡くなっているので、作者自身の手による決着は存在しない。きれいに畳まれた結末を求めて読むと、間違いなく肩透かしを食う。ここは先に知っておいたほうがいいと思う。
そのうえで面白いのが、読者のあいだで「どこで終わったことにするか」の意見が割れていること。ある編の結末に対して読者から抗議と要望が殺到して、そのために掲載誌を変えて新作が発表され続けることになった。一方で、そこで終わりでよかったと考えている人もいて、当時の担当編集者ですら、そこで完結させなかったのは残念だったと言っている。
終わらなかったことが、そのまま作品の一部になっちゃってる。こんな作品そうそう無いよ。
設定は揺れる。それが前提
掲載誌が変わるたびに、また作者の構想が変わるたびに、設定が食い違っていく。一本の長い作品として筋を通して読もうとすると必ずつまずく。編ごとに別の作品くらいの気持ちで開いたほうが楽しい。
巻数の話だけ先に
紙の単行本は版によって巻数がまったく違っていて、どれを基準にすればいいのか分かりにくい。電子版は27巻まで。ここだけは主語をはっきりさせておくね。
で、誰に薦めるか
薦めたい人
- 名前は知ってるけど読んだことがない人。まさに俺だった
- ヒーローものに社会性とか哲学が混ざってるのが好きな人
- 60年代のSFの手触り、あの重たさを味わいたい人
- 作り手の事情ごと作品を読むのが好きな人。借金の話も含めて全部が地続きだから
やめておいたほうがいい人
- きれいに完結する作品を求めている人。これは終わっていない
- 設定の一貫性を大事にする人。揺れることが前提になっている
- いまの漫画のテンポに慣れている人。展開の速さは期待しないほうがいい
最後に
借金を返すために描き始めた作品が、五十年以上にわたって描き継がれて、それでもまだ終わっていない。この一点だけでも、俺は開いてみる価値があると思うよ。まずは1巻を試し読みしてみてほしい。加速装置の人、じゃなかったんだなって分かるはずだから。
この作品について
配信の実データと、確認できた公式情報だけを並べています。
- 作者
- 石ノ森章太郎
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌
- **一誌ではない**。1964年7月19日に『週刊少年キング』(少年画報社)で連載開始したあと、『週刊少年マガジン』(講談社)『冒険王』(秋田書店)『COM』(虫プロ商事)『週刊少女コミック』『週刊少年サンデー』『少年ビッグコミック』(小学館)『月刊少年ジャンプ』(集英社)『月刊マンガ少年』(朝日ソノラマ)などを渡り歩いた
- 連載期間
- 1964年開始。断続的に50年以上メディア展開が続いている
- 連載状況
- **未完**。完結編にあたるシリーズの完成前に作者が死去したため、作者自身の手による漫画作品は完結していない
- ジャンル
- ヒーロー・ヒロイン
- 電子版
- 27巻まで/全27冊
- 配信期間
- 2014年10月1日
- 評価
- ★4.95(61件)
- 試し読み
- あり
この作品のQ&A
- 『サイボーグ009』は何巻まで出ていますか?
- 電子版は27巻まで、全27冊が配信されています(2014年10月1日時点)。紙の既刊とは数が違うことがあります。
- 『サイボーグ009』は無料で読めますか?
- 試し読みの用意はありません。
- 『サイボーグ009』のほかの人の評価はどうですか?
- 配信ページに付いているレビューは61件、平均4.95点(5点満点)です。巻ごとの点数は巻の一覧にあります。
- 『サイボーグ009』を全部そろえるといくらですか?
- 全27冊で11,880円です。1冊あたり約440円になります。価格は取得時点のもので、セール等で変わります。
巻ごとの配信状況
配信されている巻を並べています。
配信日と評価を表で見る(全27冊)
| 巻 | タイトル | 配信日 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1巻 | サイボーグ009 (1) | 2014年10月1日 | ★4.80 |
| 2巻 | サイボーグ009 (2) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 3巻 | サイボーグ009 (3) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 4巻 | サイボーグ009 (4) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 5巻 | サイボーグ009 (5) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 6巻 | サイボーグ009 (6) | 2014年10月1日 | ★4.67 |
| 7巻 | サイボーグ009 (7) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 8巻 | サイボーグ009 (8) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 9巻 | サイボーグ009 (9) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 10巻 | サイボーグ009 (10) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 中間の7冊を省略 | |||
| 18巻 | サイボーグ009 (18) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 19巻 | サイボーグ009 (19) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 20巻 | サイボーグ009 (20) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 21巻 | サイボーグ009 (21) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 22巻 | サイボーグ009 (22) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 23巻 | サイボーグ009 (23) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 24巻 | サイボーグ009 (24) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 25巻 | サイボーグ009 (25) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 26巻 | サイボーグ009 (26) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 27巻 | サイボーグ009 (27) | 2014年10月1日 | ★5.00 |
| 1冊の価格 | 440円 |
| 全27冊 | 11,880円 |
価格は取得時点のものです。セール等で変わります。
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